特看【国立4大学 特別教科(看護)教員養成課程】について

一般社団法人日本看護学習支援協会は、千葉大学などの国立大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程の卒業生有志が、非営利目的で設立した、看護学生、看護師の学習を支援する法人です。

1984年 千葉大学教育学部前で (特別教科(看護)教員養成課程12回生)
1984年 特別教科(看護)教員養成課程12回生と教官(卒業コンパ)
「教育学士」として巣立った看護師たち

ー教育学部 特別教科(看護)教員養成課程ーとは

専門科目を理解するためには、中学高校領域の理科や算数の知識が土台になります。しかし「看護系学校の入試に理科がなかった」「中学高校時代の理科や生物の学習が不十分で入学した」という看護学生が少なくない実態に気づき、専門科目と関係が深い「理科」の知識を確認する「看護につながる理科検定」を実施し、専門以前の「理科」の習得の目安としよう・という構想をもったのは4大学(千葉、徳島、弘前、熊本大学)の教育学部に1966年から2000年までの間に設置されていた「特別教科(看護)教員養成課程(以下、「特看」)」の卒業生有志です

そして、「業者」に教えてもらうのでなく、看護学生、看護師の相互支援の形を作る。そのため「理科からつなげる解剖学習会」では、理解できた人が、出来ない人に、わかるように教える訓練もしています。国家試験の対策業者はたくさんできましたが、「お客様」になって個々に業者に知識を与えてもらうだけでは「自分たちで学びあって看護師全体のレベルアップを」というスピリット、看護でいうセルフケアの精神が育ちません。ーこうした活動を始めた、特看とは・・・「あなたたちは教育学士として巣立つ、だから教育を考えていくことを期待されている」といわれて卒業した「特看」と、その背景として、20世紀の看護の大学教育のあゆみについて、簡単に紹介します。

 ”特看” に想いを馳せて      
千葉大学教育学部 特別教科(看護)教員課程 11回生(1979年~1983年)
須田 峰子

1983年千葉大学教育学部 特看11回生
卒業時(前列中央が筆者)

、  ~大学における看護教育の歴史~

わが国の大学における看護教育は、戦後間もない1952年、高知女子大学家政学部看護学科で始まりました。翌年1953年に東京大学に衛生看護学科(現健康科学・看護学科)が設立され、看護職の教授がいなかったため、医師により医学モデルに基づく教育が行われていました。卒業生のほとんどが病院の看護師ではなく、教育者・研究者・保健師になっています。

1963年以降、高等学校衛生看護科が増設され、高校教諭の資格をもつ看護教員確保が急務となりました。このとき大学の教育学部に設置されたのが特別教科(看護)教員養成課程(以下「特看」)でした。卒後の学士号は教育学士で、高等学校教諭看護・保健2級、中学校保健1級、養護教諭1級の教員免許とともに看護婦国家試験受験資格が与えられましたが、そのために必要な180単位にも及ぶ過密なカリキュラムを克服しなければなりませんでした。1966年に熊本大学、ついで徳島、弘前、千葉大学の教育学部に設置され、特看をもつ4つの国立大学は、看護界で「4大学」と呼ばれました。

1975年、千葉大学に国立大学として初めて看護学部ができました。医学部といえども看護学部の自治を犯すことができないというのは極めて大きな意味がありました。そして千葉大学の特看は、看護学部に看護教育の役割を引き継ぐ形で1985年に13回生の卒業をもって閉課程となりました。

〈参考〉草刈淳子・見籐隆子・小玉香津子編「2000年に看護を語る」日本看護協会出版会2000.7

~ 特看と私 ~       

私が40年以上も前に千葉大学の特看を受験したのは、先見の明があった高校の進路指導の先生に「これからは看護も大学教育になる。」と勧められたからです。1学年20人程度でしたので学年も先生も垣根のない一つ屋根の下の住人という感覚でした。13回生で閉課程になったため同窓生が少人数ですから今でも交流が続いています。医学部や病院に付属した位置で看護を学ぶのが一般的な時代、総合大学のキャンパスの中で、様々な専門の学生や教官と交流し、広い視野で看護をとらえる柔軟性が養われたことも良かったと思います。

卒業後はというと、衛生看護科の高校教諭や保健室の養護教諭、臨床経験を積んだ後大学院に進み研究者に・・・とにかく様々な立ち位置から看護に係わっている中で、私は、臨床が大好きで卒業後からずっと病院で働き、現場の視点を活かした論文もたまに書いています。

 ~ 看護学生・看護師の皆さんへ ~ 

先人たちの頑張りで看護系学部をもつ大学は平成30年に283校になりました。しかし、増えた反面、実習環境が恵まれない学生の方たちもいらっしゃるなど質の担保が難しいと聞きます。

もし、学生時代の学びの環境が十分でなかったとしても、学習の機会は卒業後にもあります。臨床に出て何が必要かを痛感したら、あらためて教科書や専門書を開いて知識を融合させてください。新人に身を任せてくださる患者さんに学ばせていただくことに感謝し、専門職としての誇り、優しさをもって安全に看護をしたいという気持ちがあれば知識・技術も実践力も身について行くと思います。

 *須田峰子 (すだ みねこ)〈プロフィール〉

1982年 千葉大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒業 教育学士

2017年 人間科学総合大学大学院修了 修士(心身健康科学)

1982年~ 千葉県千葉リハビリテーションセンター

1989年~ 千葉市立海浜病院

2003年~ 千葉市立青葉病院 看護師長 副看護部長

2013年~ 千葉市病院局経営企画課 人材確保対策室担当課長補佐

2016年~ 千葉市立海浜病院 医療安全室長 

2020年~ 千葉市立海浜病院 医療安全室長 感染対策室長(兼務)

〈資格〉看護師    教員免許(高等学校保健2級、中学校保健1級、養護教諭1級、看護2級)

認定看護管理者(日本看護協会)医療安全管理者(日本病院会) 医療経営士3級(日本医療経営実践協会)

贅沢な実習をしていた特看の学生達
ー1980年代千葉大学病院勤務医    Y. T  

 1980年代の千葉大学医学部付属病院には、内部の看護学生として大学病院の付属看護学校、千葉大学看護学部、「特看」と呼ばれていた教育学部の別教科(看護)教員養成課程と3施設が実習にきました。当時、看護学部や教育学部の特看は、いわゆる「進学校」の高校出身者が多く、我々とも高校の同窓生つながりなどで、専門学校生より距離が近い印象でした。先輩医師が「学生時代からの考察では、学内で例年かわいい子が集まる学科は教育学部の特看だ」といっていましたが、勉学にいそしむ私には区別がつきませんでした。特看を意識したのは、研修医になり手術で執刀医ができるようになったときです。器械だし(ペアンや、糸と針をつけた持針器を医師に渡す役目。直接介助)の看護師さんが「今日は、教育学部の実習生が器械出しをします」というので「ええー!」と驚愕しました。私は医学生時代、台にのって遠目で手術を見学させてもらうのが精いっぱいだったのに。ベテラン看護師が「私が後ろについていますし、学生は術式の本と器械を持ち帰って予習しているので心配ないですよ」。確かに実習生は、ベテラン看護師のサポートで、マニュアルどおり「ペアンは、執刀医の手のひらの中へ置くように渡す」ことを忠実に実践しました。しかし問題が。熱心すぎる実習生は、ピシ、ピシ、と音をたてて「手のひらの中へ置く」、つまり私はその都度、ペアンで思い切り手のひらをひっぱたかれるのです。先輩医師の前で施術を進める緊張もあって「もう少し優しく渡してください」という余裕はなく、痛さで「あと何回ひっぱたかれるのか、もう限界だ」と思っていると、看護師さんの「学生の実習はここまでです」という天の声。「あーよかったー」。以後、特看ときくと手の傷みを思い出します。病棟実習でも、特看の学生は、医学生なみに、数人ずつで医師に受け持ち患者の病態カンファレンスをしてもらっていて驚きました。卒業してすぐ教員になってもいいように、手厚い指導があったのでしょう。ほどなく閉課程になったのは、贅沢なカリキュラムゆえ経費が掛かりすぎたせいともききます。数少ない卒業生が、その後各地で活躍されている様子を知り、嬉しく思います。(千葉県内 総合病院 医師)

自信がない看護学生を応援する「看護につながる理科検定」
ー日本看護学習支援協会 理事一同

 基礎知識が不安定なまま看護学生になった人に、中学高校の理科や、濃度・割合の計算など、基礎学習の支援をすると、専門科目の自己学習がすすみ、めざましい成果がでています。入職後の自信につながり、離職の防止にもなっている、との声もよせられています。実習や国家試験の学習にハードルが高い人にこそ、地道に義務教育の土台から学びなおしてほしい。基礎学習の指標として学習成果をみる「看護につながる理科検定」を開始しました。教育学士として巣立った特看の願いをこめた「看護につながる理科検定」を、育てていければ、と思っています。 

弘前大学、徳島大学、熊本大学の特看卒業生のご寄稿も、掲載していく予定です。特看に関係する思い出、近況など投稿をいただける方は、当協会「お問い合わせフォーム」からお願いします。

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